タコ部屋で自我に目覚めたイケメンは、キルギスタンでVR瞑想して暮らしたい!(前編)【たらい回し人生相談】
【たらい回し人生相談】〜ヤバいやつがもっとヤバいやつに訊く〜 連載第7回
■とにかく一番脳汁を求めていた:
筆者:いくつか具体的なエピソードを追う形で話を……。
Yくん:話せないことも多いんですが、エピソード自体はいろいろあります。留学時代は寮に住んでたんでたんですが、他の留学生と二人部屋のはずだったんですよ。行ったらカザフスタン人が五人いたんですよね。
大司教:二人部屋に?
Yくん:はい。なんか部屋がない友達を一緒に住ませてくれってことで。部屋が見つかったらすぐ出て行くって説明されたんですが、結局三か月ぐらいいましたね。ある時、部屋に帰ったら僕のベッドでセックスしてたりとか……。そこから中央アジアとか旧ソ連圏、イスラム教なんかに興味を持って。あとパキスタン人とかアゼルバイジャン人と友達になって、イランに旅行したんですよ。それでイスラム教いいねえってなって改宗したんです。
筆者:ええと……えっ?(聞きなれない国名が多く出てきて混乱する)
Yくん:それでパキスタン人とかベルギー人とかロシア人とかが僕の部屋に聖書とかコーランを持ち込んで討論会を開いたりしてましたね。その中には某国から中国に逃亡してきた指名手配犯とかもいて。(注3)
筆者:宗教的な集まりなんですか?
Yくん:いや普通の留学仲間です。学生仲間ですね。
大司教:宗教についての議論というのは、日本では忌避されることが多いですが、世界的には普通に議論の対象になる事も多いです。
Yくん:そこから大学院に行ったんですが、選んだ一番のポイントは場所なんですよ。中国の辺境で、ええと周辺国との往来が盛んなエリアがあるんですが、そのあたりです。少数民族のデルタはそういう場所なので、いろいろと怪しいビジネスがあって、怪しい人たちがたくさん集まっているんですよね。
大司教:そこで怪しい人とつるんでいたと。
Yくん:現地にはいろいろとグループというか、勢力がたくさんあるんですが、ざっくり分けると中国のそういう層には都市部派閥と農村派閥があります。やる犯罪の傾向が違ったりします。自分はあるグループのボスと仲良くなって遊んだりしてました。
筆者:なんでそういう人と仲良くしようと?
Yくん:脳汁が出るからです。
大司教:脳汁がね。
Yくん:脳汁です。
大司教:まあ、簡単に言うととても良くない地域に出入りするとても良くない若者って感じですね。
Yくん:余談になりますけど、たとえば「トカレフの余りが出てきたからあげる」って感じでトカレフを渡されたことなんかがありましたね。手入れしてないから使ったら暴発するよって。そのときは「わぁ~ヨルムンガンドみたい~」って思いました。
筆者:???(北欧神話のヨルムンガンドしか知らないので混乱する)
大司教:アニメです。
Yくん:あとクローズ(不良マンガとのこと)みたいな高校生活を送った結果、指とか片目がない人がそのグループにはわりとゴロゴロいましたね。椅子にしばってドライバーでえぐるって言ってました。あとは、個人的に「外資コンサル」って呼んでいる仕事があります。
大司教:ほう。どんな仕事ですか。
Yくん:出会い系詐欺の文章を本物のパパ活女子っぽくするアドバイスですね。写真とか文章をリアルにしたりですね。だから恰好をつけたいときは外資コンサルって名乗ったりできます。とまあ……そんな感じで楽しくやってたんですが。
大司教:中国にコロナで戻れなくなっちゃったと。
Yくん:あと論文さえ出せば大学院を卒業できる状況だったんですけどね。
大司教:そこからタコ部屋に入る流れになるわけです。
おぼろげながら彼の人物像がわかってきた。彼はいわば「選べる側」の人間なのだが、とにかく選択肢の中で一番ヤバそうなものを選ぶという。少し専門的な表現をすると、彼は異常なまでにリスク選好性が高いのだ。
注3:前回のNくんもそうだがシームレスに違法のにおいがする話に移行する。